儒学のすすめ
論語 現代語訳大全

05-02 『時勢に左右されない人格』

現代語訳

お師匠様が南宮适なんきゅうかつ:)南容なんようのことを評されました。「国に道があるときには、失脚することはありません。国に道がないときでも、刑罰にかかることはありません。」

このような理由で、兄の娘を南宮适なんきゅうかつ嫁がせました。
登場人物
  • お師匠様 … 孔子こうし本人。名はきゅう、字は仲尼ちゅうじ
  • 南宮适なんきゅうかつ孔子こうしの弟子。名はかつ、字は南容なんよう

現代への応用(☑表示)

現代社会では、個人の評価はしばしば「どの環境にいるか」によって大きく左右されます。景気の良い会社に所属していれば評価され、不遇な環境にいれば実力があっても正当に評価されない、ということは珍しくありません。

しかし、この章で孔子が評価した南宮适なんきゅうかつという人物は、そうした外的条件に依存しない安定した人格の持ち主であると示されています。

国に道がある、すなわち政治や社会が健全である時には、その能力と人格によって正しく評価され、地位を失うことはない。一方で、国に道がない、すなわち不正や混乱が支配する時代においても、不用意な言動で身を滅ぼすことなく、刑罰を受けるような過ちを犯さない。

これは単なる「要領の良さ」ではなく、どのような状況でも節度を守り、道を踏み外さない人格の強さを意味しているのではないでしょうか。

この考え方は、現代においても重要なヒントを与えます。

たとえば職場において、組織が順調なときには成果を出せる人は多いですが、問題が起きたときや環境が悪化したときにこそ、その人の本質が問われるものではないでしょうか。また、社会の価値観が揺らぐような状況でも、流されずに自分の軸を保てるかどうかが、長期的な信頼につながると考えられます。

さらに、自分自身の生き方としても、順境と逆境のどちらにおいても大きく崩れない「安定した人格」を築くことが、結果として人生のリスクを減らすことにつながると考えられます。

この章は、「良い時代に活躍できる人」ではなく、「どんな時代でも道を外さない人」こそが真に信頼されるという価値観を、私たちに示しています。

原文・書き下し文(☑表示)

子謂南容。南容なんようう。
邦有道不廃。くにみちればはいせられず。
邦無道免於刑戮。くにみちきも、刑戮けいりくよりまぬかると。
 
以其兄之子妻之。あにもっこれあわす。
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